法律相談#60
家庭の事情があって会社を退職したのですが、会社からいただいた退職金が期待していた金額よりも少なくてびっくりしました。会社に聞いたら、1年前に就業規則を改定したということでした。これは、問題ないのでしょうか。
就業規則は、会社が労働者を対象にして労働条件などを定めた規則です。就業規則が労働者に周知されていれば、その就業規則の内容が会社と労働者との労働契約の内容となります。したがって、就業規則を労働者と合意することもなく労働者の不利益になるような変更をすることは原則としてできません。
ただし、会社には、経営状況が悪化するなどして就業規則を改正する必要性が生じることがあります。そのため、変更が例外的に許される場合があります。すなわち、就業規則の変更が労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容性などの事情に照らして合理性が認められ、変更後の就業規則を労働者に周知させていた場合には、その変更が認められます。
就業規則の周知は、それを労働者に配布したり、あるいは事業所に備置して閲覧される状態にしておく必要があります。設例の場合は、退職するまで退職金の規定が改定されたことを知らなかったわけですから、変更後の規則が周知されていなかった可能性が高いですね。また、会社には経営状況の悪化など退職金を減額させるだけの事情がないと、規則の変更が合理的とは認められないでしょう。次回は11月6日(月)