法律相談#94
兄が1年前に死去しました。兄は独身で父母も随分前に死亡しているため相続人は私だけでした。兄とは疎遠になっていて、資産もなかったので相続の手続を何もしていなかったのですが、最近になりローン会社から借金の督促がきました。私は、その支払をしなければいけないでしょうか。
相続は、被相続人(死亡した人)の財産的な地位を引き継ぐことです。マイナスの財産(負債のこと)もすべて引き継ぎます。資産がないのに負債だけある場合には、相続人には何らメリットがありません。こういう場合には、相続放棄(相続を拒否する)をすればいいのです。相続放棄は原則として「相続の開始を知った時から3か月以内」にすることが必要です。この期間を熟慮期間と呼びます。しかし、被相続人と疎遠であったり、資産がない場合には、資産や負債を調査しようとさえ考えないことがあります。こういう場合にまで熟慮時間の開始時期を「相続の開始を知った時」に固定すると、あとで負債がわかっても手遅れになってしまいます。そのため、判例では、遺産の有無の調査を相続人に期待することが困難であると認められるときは、相続人が遺産の全部または一部の存在を認識した時から熟慮期間を起算することとされています。設問の場合も、督促がきて初めて被相続人の財産(負債)の存在を認識したことになるので、そこから3か月以内に手続きをすれば、相続放棄が認められるはずです。
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