【ここらんしょ】スイーツ対談
お客さんに喜んでもらえるのが一番うれしい。
あとは単純に作ることが楽しい
on the tsunodori teracce
原 琢己さん (45)
上越市出身
菓子工房 あん味堂
古川 幸さん (45)
上越市出身
取材場所である多賀茶焙煎所で和菓子の提供をしているあん味堂の古川さんと、昨年10月柿崎区にヴィーガンスイーツをメインとしたon the tsunodori terraceをオープンした原さん。
実はふたりには意外な共通点がある。
古川「お久しぶりです」
原「お店を出す前に相談したことはあったけど、直接会うのは卒業以来だよね」
古川「そう。まさかこんな形で再会するとは(笑)。え、25年以上ぶり!?」
原「高校の頃と変わってなくて驚いた!」
――おふたりは高田高等学校の同級生なんですよね。そんなおふたりがこの道を目指したきっかけを教えてください。
原「僕は両親のそれぞれの趣味をどっちも引き継いでいて。母親の趣味が料理作りだったんです。誕生日にケーキを焼いてくれたり、マドレーヌを焼いてくれて、手伝うとその分いっぱい食べられるのがうれしくて進んで手伝っていたら、いつからか自分でも作るのが好きになっていったというのが大きいです。でもそれを職業にしようとは思っていなかった。山好きな父の影響で登山家とか山のガイドになりたいって思っていて(笑)。それもあって最初は山小屋で働いていたんです。ただ、山小屋勤務だと家庭を持つのが難しいんじゃないかと気づいて(笑)、下山を決意。そこから夜間の製菓学校に通いながら昼間は洋菓子屋で働いて。そのまま就職しました」
古川「もともとお菓子を作ったりするのは好きだったけど、趣味でしかなかった。でも、高3になって進学先の資料を見ていたら製菓学校のパンフレットを見つけて」
原「え、あの学校に製菓学校のパンフレットなんてあったんだ」
古川「うん、あったんだよ(笑)。それは新潟の学校のだったけどね。それを見て“これだ!”って。小さい頃の夢は教師だったんだけど、進路を悩んでいる時にそのパンフレットを見て“そうか、好きなことを職業にしていいんだ”って」
原「最初から和菓子志望だった?」
古川「大阪の専門学校で洋菓子と和菓子どっちも学んで、そのうえで和菓子のほうが自分に合っているなって。それで、奈良の和菓子屋に就職して9年働いていました」
――原さんはなぜヴィーガンやマクロビといったスイーツを?
原「洋菓子屋で働いているときに生まれた長男がアレルギー持ちで卵も牛乳も小麦もダメ。僕が作っているものが食べられない。それってすごく悲しいじゃないですか。そこからアレルギーのある人や理由があって食事制限している人でも食べられるものを作りたくていろいろ試行錯誤しました」
――古川さんがあん味堂として活動を始めたのはいつから?
古川「いつからが正式になるのかよくわからないんですが(笑)、きっかけは酒まんじゅうでしたね。奈良の和菓子屋を辞めて戻ってきてしばらくは両親の農業を手伝ったり、正善寺工房を紹介してもらってそこで地産地消をテーマにした菓子作りをしたり。その後、結婚出産を機に仕事から離れていたときにイベント出店用の酒まんじゅうの試作を作ってほしいと言われ、引き受けたのが縁で次は百年料亭 宇喜世で出すデザートを作ることに。そのときにこの屋号ができたので2018年頃からですかね。人の縁が続いて今に至っている感じです」
――今後の目標はありますか?
原「実家がこめ農家なのでいつかは家を継ぐつもりで上越に戻ってきて、でもやっぱり山も好きだったんで(笑)、何年かはロッテアライリゾートで働いていましたが、昨年納屋の一部を改装してお店を始めました。体にいいもの、アレルゲンの少ない食材ってこだわるとコストもかかるし制約も多い。ホテルや洋菓子店で働いていた時は仕入れられた食材も個人だとそうもいかない。でもそんな条件の中でおいしいものを作るって考えると逆にやる気がでるし楽しい。まだまだ軌道に乗ったとは言えませんが、こめ農家と両立しながら皆さんに喜んでいただけるものを提供していきたいと思っています」
古川「この仕事の一番の喜びは“おいしかった”と言ってもらえること。いろいろ考えて試してつくることも好きですし、うまくいくと嬉しい。ただ、今はひとりで作っているのでどうしても無理ができない。個人の目標としてはもっとおいしい和菓子をたくさんの人に届けることだけど、“人を育てる”ことも視野に入れていかなくちゃなとは思っています」
おん ざ つのどり てらす
on the tsunodori terrace
柿崎区角取にある植物生まれのやさしいスイーツを扱うヴィーガン・マクロビスイーツ専門店。最新情報はInstagram(on.the.tsu
nodori.terrace)をチェック
菓子工房 あん味堂
仲町にある多賀茶焙煎所内に工房を構える。お茶とともに上生菓子などを楽しめるほかテイクアウトも可。最新情報はInstagram(anmidou)をチェック
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