もくもくつくる人@多賀茶焙煎所 #4  陶芸「和楽窯」 山岸 丈訓(じょうくん)さん (46)

陶芸「和楽窯」
山岸 丈訓(じょうくん)さん (46)
糸魚川市出身・在住

 

車の整備士を15年、そのあと長距離トラックの運転手を1年、東京に手相を習いに行ったこともあった。陶芸を始めて4年目に、ある陶芸家から和楽窯の看板と灯油窯を譲り受けた。その後釉薬の調合を独学で始め、本格的な作陶の道へ。
色の違うカラー粘土を複数作り、それらを組み合わせることで模様を描き出す「練り込み」という技法が山岸さんの代名詞。複雑で難しく根気のいる技法だ。山岸さんの練り込みはひとつの花びらに60色の土を使い、ひとつのカップにいくつもの花模様が施される。そこには気の遠くなるような時間が費やされている。ろくろで作るカップなら同じ時間で300個以上作れるという。よほど好きでなければ、と思うところだが、好きでやっているわけではない。テレビでその技法に出会ったとき、とても自分には無理と思いながらも練り込みをしている自分の姿が浮かんだという。
「好き」が見つからずに悩んだこともあった。が、それを探しても遠回りするだけだとある時気づいた。「好き」や夢はなくてもいい。目の前にあるもの、自分が出会ったことに真剣に向き合ってみたらいい。そしていつか何かを成したあとで、夢も目標もなくても大丈夫と言えたら。小学校で何度か出張教室をするうちに、子供たちにそんな言葉をかけてあげたいと思うようになった。
昨年、練り込みの壺で新潟県の『工芸2023』の育成賞を受賞。指導にも取り組んでいる。達観した精神世界から生まれた練り込みカップは自分を省みるコーヒータイムにぴったりかもしれない。

 
山岸丈訓 練り込み展 4/24(水)~7/22(月)
多賀茶焙煎所ギャラリースペースにて開催。
上越市仲町3-1-9 10:00~17:30
火曜定休
TEL.025-526-7570

★「もくもくつくる人@多賀茶焙煎所」は、3か月に一度掲載。多賀茶焙煎所ギャラリーコーナーで展示販売する作家さんをご紹介します。